こんにちは、アンリです。
今後のビジネス環境を分析するために欧州経済の分析をしました。
EU、各シンクタンクやJETROなどの経済見通しを調べた結果を
製造業の会社の社内報告で必要なレベル(マニアックな経済学用語は回避)で
先行きを見通すために必要な情報をざっくりまとめてみました。
欧州経済の先行きは明るいようで安心しました!
1.景気動向
2021年前半から米中への輸出を中心に経済は予想以上の回復を見せている。
2021年後半からは欧州内の内需も回復する見込み。
<GDPが成長すると予測する理由>
- 2021年4-6月期の実質GDP成長率は前期比+2.0%と
3四半期ぶりのプラス成長を達成。
米国や中国への輸出の大幅な回復が最大の要因とみられる。 - ワクチン接種等によりCOVID-19の感染拡大や重症化を防止できている。
- 個人消費の回復(=リベンジ消費)がはじまっており、特にサービス産業が恩恵を受けている。
- ワクチンパスポートの導入により欧州域内への観光は再開しつつある。
- コロナ対策基金であるRRF(欧州復興基金)の効果
ただしコロナからの完全回復は『道のりは長く、下振れリスクは多くある』との意見あり。
<主な下振れリスク>
- 新たな変異種の出限による厳格なコロナ対策の再導入。
- インフレ圧力の強まりにより金融緩和が早期終了。
21年8月の消費者物価指数は3.0%と物価目標の2.0%を大幅に超過! - 金融政策と同様に各国政府の企業支援措置が早期終了。
- コロナ禍で蓄財された分の消費(リベンジ消費)が期待したほどではない。
失業率が7.2%(コロナ前は6.5%)と高く、余力がない世帯が多い? - 特にイタリア、スペインなどの南欧州諸国は雇用、所得環境が相対的に悪く景気回復は鈍い模様。
なお、Brexit後、EUとは一線を画した政策をうった英国はワクチン普及ペースが速く、
さらにコロナ対応の経済政策規模が比べて大きく、2021年夏頃から他欧州諸国を
上回る回復が見込まれる。
ただし、Brexitとコロナの影響で農業や輸送業での労働力不足が顕在化しており、
中長期的には経済成長の足かせになる可能性あり。
2. 欧州における政治リスク
・ドイツ:21年9月の総選挙でメルケル首相の後任が決まる予定。
メルケル氏の後継として本命と見られていたCDU党首のラシェット氏の支持率が
7月の洪水時の不謹慎な態度を機に低下し、現在はSPDのシュルツ財務相が優勢。
とはいえ伝統的な2大政党による連立政権誕生の可能性が高く、
現在の財政拡張スタンスは継続される公算が大きい。
ドイツ総選挙についてわかりやすい記事を見つけたので、シェアしておきます。
メルケル政権16年が終幕へ ドイツの選挙制度を解説 – BBCニュース
・フランス:2022年の大統領選を控えている。
前回同様、マクロン大統領と極右政党のルペン氏との一騎打ちが見込まれる。
EU懐疑派の右翼のルペン氏が大統領になると欧州統合の深化が停滞する可能性がある。
フランスの大統領選については、こちらの記事がよくまとまっていると思います。
フランス大統領選を展望する ~マクロン大統領再選の死角は?~ | 田中 理 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)
3.経済政策面でのキーワード
・EUの復興基金『次世代EU』:7500億ユーロ
総額約97.5兆円。
3900億ユーロは返済不要の補助金と3600億ユーロは返済要の融資で構成される。
「環境」「デジタル」など将来性のある分野への投資で
コロナ禍からの景気回復と持続可能な経済への転換を推進。
2021年~2027年のMMF(多年時財政枠組み)の特別予算として上乗せされる。
・RRF『復興・強靭化ファシリティー』:5600億ユーロ
復興基金7500億ユーロの75%に該当。
コロナ禍の被害が甚大な国の復興にあてられる。
出典:EU MAG EUの新型コロナ禍からの復興を支える大規模な財政支出計画
今回の記事の主な参照元:
日本総研:JRIレビュー Vol.8, No.92 欧州経済見通し 2021年8月6日
Business Europe: Economic Outlook Summer 2021 July 2021
MRI: ウィズコロナ下での世界・日本経済の展望 2021年8月
European Commission:Summer 2021 Economic Forecast: Reopening fuels recovery 7 July 2021