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21年秋:天然ガス価格が急騰し欧州大混乱!5つの理由をわかりやすく解説。

アンリです。

毎朝BSのワールドニュースを見ていますが、

  • 最近はイギリス、ドイツ、フランスのニュースで天然ガス価格の高騰がトップニュースになっています。
    ドイツでは年初比で輸入ガス価格が+40%超え
    小売りガス価格を平均12%以上値上げ(家庭の暖房代が+130€/年)
  • イギリスでは発電に使うガス燃料の高騰で電力会社が相次いで倒産。(小売り価格は政府で規制されており、購入価格の高騰を消費者に転嫁できないため
  • フランスは10%以上ガス価格が高騰をうけ、来年4月までガス料金を固定

家計への圧迫による経済への影響、ガス不足による社会混乱、熱源/動力としガスを使用す

る産業への波及的影響など欧州経済社会に大打撃となる可能性がありそうです。

折角、ポストコロナに向けて経済回復が進み始めた中で心配ですね・・・

天然ガスの基礎知識を先に知りたいかたは、先に3.天然ガスについての基礎知識を読んでください。

1.欧州における天然ガスの位置づけ

EU全体の電力構成において天然ガス(グラフ:ピンク)は原子力(同:紫色)につぐ、発電ソースとなっています。

 

特に国別でみると天然ガスへの依存度はイタリア、英国では高い状況です。

ドイツも石炭→天然ガスへのシフトを環境対応(※)として進めており、影響大です。

※天然ガスは化石燃料の中で炭素排出量が最小のため、
環境対応方策として重宝されています。
アンリ
アンリ

この環境対応のための天然ガスへのシフトはアジアでも起こっています。

(その結果、中国では石炭を使う発電所が操業停止され最近停電が頻発しています。)

このアジアの動きが後述する天然ガス市況の高騰につながります。

2.天然ガスが高騰している5つの理由

  1. 天然ガスの生産障害
  2. 地政学的問題
  3. 悪天候で再生可能エネルギーの発電量が低下
  4. コロナ禍からの需要拡大
  5. 脱炭素社会への転換などエネルギー構造の世界的政策転換

①天然ガスの生産障害と天候不順

・20年秋から世界的に豪州やノルウェーの生産プラントでもトラブルが発生。

・21年9月の米国ハリケーン『アイダ』の影響でメキシコ湾岸の生産能力の8割が停止。

更に20年末に北東アジアで寒波が襲来
・アジアがLNGの爆買い。→北米からアジアへの輸送経路のパナマ運河大渋滞。

・益々LNGの供給が逼迫しLNGが市場最高値を更新。

・結果、アジアにヨーロッパはLNGを買い負けた。

なお、この頃の天然ガスの高騰で20年末から21年年明けに日本では電力市場(JEPX)が高騰し、新電力が何社も倒産しました。
アンリ
アンリ

・更に、欧州の春の冷え込みで需要期が長引き、閑散期の在庫量が積み増しが停滞。

②地政学的問題(ロシア):ロシア悪玉論

・主要生産国のロシアがドイツへの直通の供給ライン『ノルドストリーム2』の
早期開通を狙い、欧州向けの既存パイプラインの供給量を意図的に抑制。

・ロシアードイツをつなぐ『ノルドストリーム』はロシアと対立するウクライナを
通らないため、ウクライナに経済的打撃を与えることができる。

・ドイツ:ロシアの人権問題の対立はあるが、ロシアから直通のパイプライン
『ノルドストリーム』を拡充することは国益にかなう。
特にメルケル首相は推進派。

・EU:エネルギー政策上、ロシアへの依存度を高くしたくないので慎重。

・アメリカ:ロシアの抑え込みのために反対していたが、ストップ不可能とみて容認

 

次のドイツの政権でノルドストリーム2に対してどういったスタンスを持つ人物/政党が政権につくのかが注目されます。

’21年のドイツの総選挙の結果については、下記の記事をご覧ください。
初心者向け:2021年9月ドイツ総選挙の結果とドイツ政治の基本をおさらい!

③悪天候で欧州の再生可能エネルギーの発電量が低下

・欧州北西部の風力発電の発電量が悪天候によって減少。

④コロナ禍からの経済回復

・中国、米国を中心にコロナからの経済活動再開にあわせて、エネルギー需要が急回復。

・更に、アジアや北米での猛暑で冷房向けのエネルギー需要も増加。

⑤脱炭素社会への転換を目指し、天然ガスの需要が拡大

・特に中国でLNGの爆買いが顕著となっている。

出典: Natual Gas Industry in China | AAG (aagenergy.com)

 

以上5つの要素が絡み合って大きな流れの中で今回の天然ガスの高騰が発生しました。

なお、欧州では『ロシアが供給量を絞っていること』と、『アジアの消費が伸びている』

ことを特に強調して、特にロシアを悪玉にしています。

でも散々人権問題などでロシアに制裁を課している西側諸国なので、

ロシアが外交カードに天然ガスを使うのは仕方ないかと思います。

それよりも今後の環境対応のために脱石油に向かう社会の危うさが

今回の天然ガス価格の高騰として出てきたのではないかと思います。

ESG投資ということで、原油生産や石炭発電の投資から資金を引きあげる『ダイベスト』の

動きが加速していますが、急速にやりすぎると循環型社会への移行が進むまえに、

原油の供給が減ってしまうリスクがあります。

そうなると需給バランスが崩れて今回のような天然ガスの高騰が

原油市場でも起こる可能性が将来的に十分予見できます。

『ダイベスト』の動きが過熱しすぎなければいのですが。。。。

3.天然ガスについての基礎知識

よく聞く天然ガスですが、そもそもどういった物質なのかをまとめてみました。

資料などは日本ガス協会から引用しています。

素人にもわかりやすく解説されているサイトです

一度時間があるときにザっと目を通してもらえればいいかと思いますが、

簡単に下記にまとめとおきました。

1.天然ガスとは

WIKIPEDIAによると、
天然ガス(てんねんガス)とは、天然に産する化石燃料としての炭化水素ガスのことである。メタン、続いてエタンといった軽い炭素化合物を多く含み、その他の炭素化合物も含む。現代では、エネルギー源や化学品原料等として広く使われる。

広義には、地下に存在するガス、または地下から地表に噴出するガス一般を指す。この中にはマグマを原料とする火山ガスや化石燃料ガス(可燃性ガス)だけでなく、窒素や酸素、炭酸ガス、水蒸気、硫化水素ガス、亜硫酸ガス、硫黄酸化物ガスなどの不燃性ガスも含まれる。これら不燃性ガスの多くは火山性ガスである。

炭化水素には、『天然ガス』だけではなく『石油』も含まれるそうです。
アンリ
アンリ

天然ガスをー162度で冷却して液化したものが『LNG』で、容積が小さくなるので、

日本の天然ガスは大半を海外から輸入してくるLNGに依存しています。

2.なぜクリーンエネルギーとして注目されているのか?

天然ガスは石炭や石油に比べるとクリーンなエネルギーと言われていますが、
その理由はCo2、SOx,NOxといった環境負荷物質が燃焼時に発生量が少ないからです。

出典:https://www.gas.or.jp/tokucho/

3.天然ガスの生産国と埋蔵量

天然ガスの埋蔵量の70%は中東とCIS(ロシア)で占められています。

 

最近はアメリカで発達したシェールガスなど技術革新により『非在来型天然ガス』も商業利用可能となり、資源量も増えたようです。

 

日本でも数年前に話題になったメタンハイドレートの商業化検討が進んでいますが、

今回のような騒ぎに直面するとこの検討の重要性を実感しました。

メタンハイドレートについては、こちらの産総研という研究機関のページをご覧ください。

 

 

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