先日、パリのチーズ専門店「Salon du fromage Hisada」のチーズ講習会に行ってきました。
期待以上に面白いセミナーでとても勉強になったので、復習を兼ねてみなさんに共有します。
日本では馴染みがない「チーズ屋さん」ですが、フランスで比較的よく見かけます。
スーパーで日本よりも十分豊富な種類のチーズを買えるのに、
何のためにFromagerieで買い物するのか?何か高いチーズかわされそう。そもそもどうやって何を頼めばいいのかわからない。
と思って、気になりつつも敷居が高いお店でした。
今回、友達に誘ってもらって講習会に参加したのですが、
チーズの世界/種類の概要がわかって、どうやってFromagerieでチーズを買えばいいのかがわかった気がします。
<注意>
この記事は、以下のような方をイメージして書いております。
「チーズに興味があってスーパーで買ったりするけど、基本の知識がない!」
例えば、以下の質問に答えられないチーズ素人さん向けの記事です。
・プロセスチーズとナチュラルチーズの違いって何?
・ナチュラルチーズには何種類に分類できるの?
専門的な情報はそもそも知識がないのでできませんので、
あさーく、手軽にフランスのチーズの世界を知りたい方は読んでみてください。
もっと深くチーズについて知りたい人は、一度Hisadaさんのチーズ講座をうけられることをお勧めします。60€/人、計3時間弱、4名からの開催です。
1.フランスにおけるチーズ文化
研修で教えていただいてHenriの心に残ったのは以下の通りです。
・「フランス人は今日食べるチーズを買う」けど「日本人は買い置きしてチビチビ食べる」
・「フランス人はチーズのまま食べる」けど「日本ではチーズは料理のトッピングや具」
・特産の「お漬物」が日本各地に存在するように、ヨーロッパ各地に固有「チーズ」がある。
・「フランスでは9割がナチュラルチーズ」だけど「日本では7割がプロセスチーズ」
(プロセスチーズとナチュラルチーズの違いは後程説明します)
・「ナチュラルチーズは季節によって味がかわる。同じブランドでも味ではない。」
「なぜなら食べている餌が季節によって違うから」
・AOPチーズとは、伝統的な作り方のルールを守ってその土地の土壌の良さを反映させていることを保証するもの。「美味しさを保証」するものではない。
『Appellation d’Origine Protégée (Contrôlée)アペラシオン・ドリジン・プロテジェ(コントローレ)』の頭文字をとったもので、『原産地呼称統制』と訳されています。
その土地に伝統的にあるチーズの作り方や原料となるミルクの種類など、
細かい点までチーズごとに詳細に決めて、チーズの味、伝統を守る制度です。
AOP(AOC)がついている=「美味いさ保証」ということではありません。
2.Fromagerieで買うべき?スーパーじゃだめなの?
Formagerieには「熟成師」という方がおり、仕入れてきたチーズを熟成させている。
つまり熟成の方法が店によりかわるので、熟成師によってチーズの味がかわるそうです。
チーズは熟成により味も見た目も変わるので、熟成度を確認して買うほうが良いようです。
研修で2週間熟成されたものと1ヶ月熟成されたものを食べくらましたが、
何も知らなければ別のブランドのチーズだと思うほど見た目も味も違いました。
フランス人の友達はカマンベールチーズを買う時に蓋をあけてカマンベールチーズの真ん中を押して熟成度を確認したりします。
(柔らかい方が熟成が進んでいるので食べ時とのことです。)
熟成度は正直チーズ初心者にはわからないので、
Fromagerieで「今日食べるチーズを欲しい」と伝えたほうが
スーパーで買うよりも食べ時の美味しいチーズに出会る確率が高くなります。
毎日食べるものではないので、少々割高でもFromagerieにお勧めしてもらったものを
買ったほうがいいかなと思いました。
また、久田さんのところでは、チーズを日本酒で洗ったチーズも販売されており、これは他のFromagerieやスーパーでは買えない、「久田スペシャル」といえるんだと思います。
「チーズを洗う?」という言葉はあまりなじみがありませんでしたが、
「Washed」というチーズの分類があります。詳細は次章をお読みください。
外国人の友達の家に招待されたときに、何か日本的なものをもっていきたくて色々探していたのですが、こういうのもストーリー性があって面白いかなと思いました。
海外に住んでいるとなかなか食べられない、酒粕の焼き魚を何となく思い出させてくれます。日本酒と合うかなチーズかなと個人的には思いました。
3.知っておこう!9種類のチーズ
では、Fromagerieに行って具体的にどうやってチーズを買えばいいのでしょうか?
チーズの名前なんてよくわからない・・・
という理由でFromagerieを敬遠している方は多いと思います。
ですが、実はフランス人でもチーズのブランド名まで指定してチーズを買う人は少なくて、
「今日は何系のチーズが欲しいんだけどお勧めある?」と尋ねる人が多いとのことです。
ワインでいうところの、ボルドーの赤で何かお勧めありますか?
という感じで尋ねるような感じかなと理解しました。
「その『何系』がわかんないんだ!」
という方は、是非以下の9種類を覚えておいてください!!
1.フレッシュチーズ:Fromage Frais
フレッシュなチーズ=熟成させていないチーズとのことです。
数日で作り上げるチーズなので、原材料のミルクの質が重要なだそうです。
フレッシュチーズの例:
マスカロポーネ、モッツァレラチーズ、ブラーターチーズ、フェタ、サンフェリシアン、
フロマージュブラン、
結構癖がないので、チーズの臭いが苦手な人でも食べやすいかなと思います。
講習会では「Stracciatella」というイタリアのチーズを出していただきました。
「醤油」とよく合う日本酒が欲しくなるチーズで、日本酒好きにはお勧めです!
2.白カビタイプ: fromage à croûte fleurie
外皮がフワッと白いチーズです。
カマンベールチーズをイメージしてもらうとおわかりいただけるかと思います。
熟成がすすむと中心部までトロッと柔らかくなります。
外皮は白カビですが、何と!ミルクの内に自然と入っている菌だそうです。
なので、原料となる「無殺菌ミルク:Au Lait Cru」が向いているそうです。
(後で説明しますが、フランスには牛乳にも5つの分類があるそうです。)
フレッシュチーズの例:
カマンベールチーズ、ブリー(Brie)、プチ クール(Petit Coeur)
3.シェーブルタイプ:fromages de chèvre
「シェーブル」とはフランス語で「山羊」のことです。
シェーブルチーズは小型のチーズが多いのですが、
まさにそれがシェーブルチーズをHenriが敬遠していた理由のように思いました。
だって、同じ金額出すなら大きいカマンベールチーズのほうがお得に感じませんか?
なぜシェーブルタイプが小型なのか講習で教えてもらったのですが、
話は結構単純で、山羊のミルクの総量が牛に比べて少ないので大型化できないそうです。
牛と山羊の体型差を考えれば、「そらそうだ!」という話ですが、目から鱗でした。
作りたてはフレ(白色)で、熟成が進むにつれて、色がつき、水分が飛んで小型化します。
そうなることで味の凝縮とうまみが増すそうです。
熟成が進むにつれて名称も
「フレ→Demi-sec(ドゥミセック)→Sec(セック)」と変わるそうです。
<ワンポイントアドバイス>
熟成が進むと外皮は固く苦くなるので、普通は外皮は食べないのがマナーだそうです。
まあそういう味が好きなら食べてもいいと久田さんはおっしゃられていましたが、
日本人がそれをやると単なる無知な人、もしくは味音痴な人とフランス人に
馬鹿にされそうな気がします。食べるかどうかは自己判断でお願いします。
なお、山羊は春に出産するため、シェーブルチーズの「旬」は春~夏だそうです。
チーズの旬を意識するのも面白いなーと思いました。
とはいえ、クリスマスの一大会食シーズンにあわせて、
人工的に出産時期をずらすなどして、冬にも出荷できる体制を整えているそうです。
4.ブルビタイプ: fromages au lait de Brebis
Brebis(ブルビ)とはフランス語で雌の羊とのことだそうです。
ただし、羊のミルクでもロックフォールチーズはブルビじゃなく、青カビのチーズに分類されるそうです。
熟成段階によって、フレ→ソフト→セミハード→ハードとなるそうです。
セミハードやハードの外皮はシェーブルと同様に食べないほうがいいそうです。
「メロンの皮は食べないですよね?それと同じですよ」と教えていただきました。
5.セミハード:le fromage à pâte cuite
ラクレットやゴーダ―チーズなどの硬いチーズで、
加熱するとトロッ溶けて伸びるチーズです。
ラクレットはフランスの冬の屋台の定番なので、是非食べてみてください。
なお、ラクレットチーズスーパーで売っているよりもFromagerieで買うほうが、
より水分が少なくてトロッとするそうです。
講習会では「コンテチーズ」で有名なフランス東部のフランシュ=コンテ地域圏作られる「Morbier」というチーズを食させてもらいました。
コンテチーズは熟成に4ヶ月必要だが、Moribierは1ヶ月(MAXでも3ヶ月)で出荷できるということで、
低価格だけどさっさと現金化できる、作り手にとってはありがたいチーズだそうです。
昔はコンテチーズを作る際に余ったミルクを集めてつくっていたそうです。余ったミルクの上に次に余ったミルクを足してつくっていたため、
ミルクが痛まないように灰を表面に入れて保存していたそうです。その名残でチーズの真ん中に黒い灰の層があります。
今はあまったミルクを作っているわけではないのですが、伝統的な作り方を守るためにいまでも灰をいれているそうです。
とても庶民的な成り立ちの好感度が高いMorbierチーズですが、
味もモチもち触感でとても食べやすいチーズでした。
6.ハードタイプ: Fromage Montage (Tomme)
チーズというと、アメリカの漫画にでてくる穴のあいたチーズを連想してしまうのは、一定の年齢以上のおっさんだけでしょうか?
あの真ん中に穴があるチーズはスイスのエメンタールチーズという名前だそうで、ハードタイプチーズの代表例です。
フランスでも、セミハードタイムの説明にでてきた「コンテチーズ」がとても有名です。
(とはいえ、Henriは正直名前とチーズが合致していませんでしたが。。。)
講習会では「Beaufort(ボーフォール)」というチーズをたべさせてもらいました。
黄色ポイ色をしていましたが、「夏草」を食べた牛のミルクのチーズは黄色くなるそうです。
久田さん曰く、美味しいBeaufortに巡り合うのは難しい!そうです。
特に日本では難しいとのことなので、是非フランスにいる間に沢山食べておきたいものです。
フランスでは「普通の日はコンテチーズ、特別な日はボフォールを食べる」そうで、
お値段も少しお高いそうです。
特別な機会には是非Beaufortを準備しましょう!
7.アオカビタイプ:Bleu
フランス語では別名パセリ(persilee)ともいうそうですが、不勉強なFromagerieでは通じないところもあると聞きましたので、
Henriは「Bleu)でいいと思います。
ちなみに別に野菜のパセリが入っているわけではないです。
イタリアのゴルゴンゾーラやフランスのRoquefort(ロックフォール)はHenriでも知っていました。
8.ウォッシュタイプ
「ウォッシュタイプ」はHenriは講習受けるまで良く知らなかったのですが、
塩水やマール酒などで表面を洗うチーズだそうです。
全体的に赤レンガのような色をしたチーズが多いイメージです。
表面を洗うことで雑菌の繁殖を抑えてじっくり熟成させるのが、風味豊かなチーズになるそうです。
こういう洗いもFromagerieでやっているとのことで、日本酒であらったチーズなどをHisadaさんのところでは販売されています。
酒粕料理を食べているようで面白い味のチーズでした。
フランス人の家にお土産て持っていくのに面白いかなと思いました。
9.プロセスチーズ(番外編)
講習会で教えていただいたのは、ナチュラルチーズはミルクからプロセスチーズはチーズからできるのが違いだそうです。
と言われても、よくわからなかったのですが、
ナチュラルチーズに乳化剤などを加え、加熱殺菌処理したチーズのことだと理解しました。
うちで良く食べる、Kiriチーズや日本でお世話になったスライスチーズなどがプロセスチーズの代表例です。
「ロクピ」チーズだと思ってたら、
「ロッピー」チーズと言うらしいです。
チーズはいつ食べるの?
チーズと言えば、残ったワインを流し込む前にデザート前やデザート替わりに食するものといわれています。
でもなんとなくここまで深い文化のあるものが残りもののワインのためにあるというのが理解しずらいなーと思っていたのですが、
やはり最近ではフランスでもアペロ(食前酒を飲みながら軽食を食べる)のタイミングでチーズを食すことも増えているそうです。
アペロって何を出したらいいのかよくわからなかったのですが、こだわりのチーズを数種類買って、チーズプレートにして出してみるのもいいかなと思いました。
Chez Hisadaについて
パリの1区オペラ座界隈にありますので、ラーメンなどの日本食屋が多い界隈ですね。
店舗情報 – Fromagerie Hisada | Fromagerie Hisada
また元々は日本でチーズを販売されている「チーズ王国」という会社が母体とのことです。
私は初めて聞いた会社でしたが、日本全国に展開されている結構大手のお会社さんのようです。チーズ王国オンラインショップ / TOPページ (cheese-oukoku.co.jp)
なので、日本に帰国しても「チーズ王国」でフランスや欧州の美味しいチーズが食べれようなので、フランスでしっかりチーズにはまっても大丈夫!なようです。
なお、店内では「豆腐」も販売されており、10€くらいしますが、
とても濃厚で美味しかったです♪
日本に帰らないと食べられないと思っていた本物の豆腐に出会えた〜♪
プチ贅沢したい日に是非買ってみてください!